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第5話
「グレアリング・カース始動」


友人Mametaroの存在がいい刺激となり、再び僕にゲーム開発の野心が復活しました。
もう一度、ゲームをつくる。
しかし、前回のENEMIESとおなじものでは通用せず、修正に迫られることになります。




くやしいが、プログラミング技術、とくにマシン語操作のスキルは、Mametaroの方がはるかに上だった。
ヤツはサブシステムを駆使しV-RAM直接書き込みができ、すばやい画像描写ができる。僕もいままでにチャレンジしたことは多々あれど、成功したためしはなかった。さらにいえば、Mametaroに教えをこうことも、自身のプライドが許さなかったし、彼もそれなりにの苦労と努力で身につけたマシン語操作のスキル、そんな軽々しく人にレクチャーして価値を下げる事もしなかった。

ただ、
はっきりいって、くやしい。




だが、ヤツにはもっていなくて、僕がもっているものもある。
たとえ技術がすばらしくても、RPGってのは、ほぼ99%がシナリオできまるってもんだ。


依頼された敵キャラデザインの都合上、彼のつくらんとするRPGがどんなものかをひととおり教わったが、ぶっちゃけてしまえばただダンジョンを徘徊して敵モンスターを倒して経験値をあげてラスボスを倒すのが目的の、ウィザードリィ系統のオーソドックスなものだった。このときはさすがに自分の持つシナリオと比較し「これなら対抗できる」とほくそえんだものだ。

そう僕の強みそれこそが、創作力、デザイン力、RPGで99%を占める要素そのものなのだー!

それに、RPGの製作だって、僕はすでにRPGを1こ、パーにはしたが完成させた経験をもつ。


そして、そのために作った物語がある。
ただのラスボス討伐じゃない物語が。
僕は99%を占める物語・グラフィックに十分な力をだしてやる!



結論。技術面で劣る部分を、ストーリー、グラフィックなどでまきかえすしかない。

それには、もっと物語もキャラクターも練らないと。となると、前作「ENEMIES」ではインパクトが足りない状況となった。
そういう意味では「ENEMIES」を世に出さなかったのは正解だったかもしれないなー・・・・


それに、同じゲームをもう一度作り直すのは、かなりしんどい。

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ジェット・ストリーム・アタックのディオラマのために、ドムを3機作るのと同じ。あきてくるし、新鮮度もないし。


だから、前作「ENEMIES」の亜種でいくのではなく、ゼロから、ストーリーを作り直すことにしました。
「ENEMIES」は忘れ、完全新作を作ることに。
マクロスだって、劇場版は完全オリジナルだったもんね、なんて勝手な理屈をつけて。





まずは、物語をつくることから。


当然、ありきたりのボスを倒して平和が訪れる要素は徹底排除。(先にばらすと、あらすじでは、敵はラスボスっぽい表現をしている。が、実際はそうではない。ラストには、真の敵は誰なのか、自分は何をしてきたのか、すべての謎があかされるようになっているんです。)

ヤツのRPGよりも、はるかに抜きんでたバックグラウンド・ストーリーを作ってやる!


舞台は前作と同じSFではパワー不足を感じたので、一般ウケを狙い中世ライクなファンタジーものに変更。でも、ただ中世だとマンネリな上に僕もそれを悲観してきた立場なので、「近未来で、科学の暴走で文明が崩壊し衰退、かつての中世世代にまで後退してしまう」という設定でいこう。

この後の約10年後に「ターンエーガンダム」がまったく同じ時代設定をしています。このときはほんとにビビりました。







地下ダンジョンは、はずせなかったんだな。これがないとRPGじゃない、て、いわれるくらいに当時はRPG=迷宮探索がセオリーだったから。たぶん、ダンジョン探索がないRPGは採用すらされなかっただろうね・・・



くやしいのは、ダンジョン表示のためのアルゴリズム。
ヤツがV-RAM操作による高速描写なのに対して、僕はそれができる技術がない。
でも、オールBASIC表示はさすがにプライドがゆるさない。そこで、BIOS(BASIC-INPUT-OUTPUT=SYSTEM)という、BASICインタプリタを直接マシン語で操作するという手法をとりました。コレは、結果的にはインプリタが動く機構上、描写速度はBASIC命令文でやったときのと大差ない。
ただ、オレだってマシン語でやってるんだという、なかばジコマンゾクな対抗意識から、そうしただけのことなんです・・・・。




敵キャラだけは、ヤツのRPGも僕がデザインしてるので一概にどっちがいいとかはいえなかったし、

さらにいえば僕のRPGを秀でさせるためにわざとヤツのキャラ質を落としたなんてことは当然しなかった。

心がけたのはありがちモンスターは絶対出さないこと。

ありがちモンスター、つまり、スライム・ゴブリン・コボルト・オーク・ゴブリン・スケルトン・ドラゴンね。



これは、投稿時に作成したマニュアルにも、他との差別化を図るため「スライムやゴブリンといった、ありきたりのモンスターは一切でてきません。ドラゴンすらもでてきません」て書いたぐらい。


名前も、愛嬌あるもの、和名を多用したものにした。たとえば、シロヘビ、ブツゾウ、ハネカイブツなど。コミカルな名前も起用した、アカゾンビ、アルビノゾンビなど。(後述)

ちなみにコミカルモンスターが定番のドラクエは、第1作が1986年5月27日に発売。ドラクエのほうがあと。だから、ドラクエのパクリでもインスパイアでもなかったってわけです。







こんな感じで次々と設定が決まっていきました。


でも、なんか、はっきり、違うんだ! ていう要素が欲しい。

悩みました。結局これって、単なる勇者もののRPGじゃないの・・・・
勇者か・・・・勇者である必要があるのかな?
これ、勇者でなくて、ただの一般人で勇者の末裔でもなんでもない方が、インパクトありそう。
そして、ふっと浮かんだのが、

「女の子をマイキャラにしよう」

でした。

いまでこそ当たり前だが、当時はだーれもやってなかった。RPG駆け出し期だから、当然といえば当然なのだが。




そもそも主人公は勇者であり、勇者がお姫サマを助ける方が感情移入できるから、RPGのマイキャラは勇者でした。
それゆえに女の子を操るって感覚は、少年がはたして感情移入できるのかどうか、不安ではありましたね。





つぎ、バトルシステム。

技術とメモリ容量の都合上オーソドックスな’攻撃力VS防御力’だったが、
それだけだと味気ないので、何か新しい要素がほしいなと考え、

”ヨロイを切り刻まれる”という要素のを追加しました。

これは、特定のモンスター、いかにも鋭利な刃物を持ってそうな奴の攻撃に、ランダムor一定の確率で自分のヨロイを損傷させるというもの。

切られるとプレイヤーキャラのヨロイに赤く傷が付く。損傷したヨロイは防御力が若干落ち、また、連続して切られた回数は蓄積され切られすぎると死んでしまうというスリリングな設定。
また、きりきざまれたヨロイは使い物にはならなくなり、プレイヤーは切られるたびに新しいヨロイを買わねばならなくなる。


そのおかげで、最強の武器と最強のヨロイがあればあとは何も買うものはなく、使い道のないお金がドカドカたまっていくだけ、といった「ブラオニ」状態を、「損傷の度ににヨロイを買わねばならない」という状況へ追い込むことで解決できたんです。


後日談ですが、切られるという要素は特定のプレイヤー層に「女の子が傷つけられることへのフェチシズム」みたいな刺激があったようです・・・・・







武器もほんとは使っていくうちに刃こぼれなどの理由で攻撃力が下がっていくようにしたかったのだけど、プログラムにそれを入れる余裕がなかったことから断念。もしいれてれば、また、ちがったテイストが植わっていたことだろうね。


グレアリング・カース誕生の数ヶ月後に、まったく逆の理屈で「ザナドゥ」が、武器は使うたびに熟練されこなれていき、攻撃力が上がるというシステムになっていました。


現在、カプコンの「モンスターハンター」がこの要素で定期的に砥石で研磨しなければ武器が劣化し攻撃力が下がるようになっています。これと似た感じのアイデアでした。






プログラミングやデザインは、実はMametaroにも極秘裏で行いました。
もし「実は僕もRPGを作っている」なんて情報をリークしてしまえば、Mametaroだってだまっちゃいない。さらなる技術革新を自身が行っているRPGプログラムにもりこんでくるだろう。なんて意地悪な考えから。
正々堂々勝負ではない、ずるいやりかただよね。でも、相手に手の内を読ませないというのは勝負の世界では立派な常套手段なのさ。



ストーリーなどは通学の電車(ほんとは徳島は電車は存在してないのだが・・)の中で妄想に近い形で行ってました。
モンスターデザインは、授業中にこっそりノートに書き込んで考案。だから、テストの成績めちゃ悪っ!
でもいいのさ。いまの僕に大事なのは学業じゃない。これからの人生を変えるかもしれないことを今やっているのだから。

帰宅して、ノートに書いたその絵をキャラデータ化しました。
まず白紙にそのモンスター絵を清書する。
つぎに、その絵の上にサランラップを貼り、油性ペンでトレースる。

そしてそれをFM-7のモニターの、パターンエディターの画像編集欄に重ね合わせて貼り付け、輪郭を点々でドット埋めしていく。という方法。


モンスターは全部で37種類に決定。

(弱い順)
「ヒノタマ」妖怪探偵ちまちまにこのときはまっていて、インスパイアされました)
「ブツゾウ」(おなじく)
「ハネカイブツ」
「ヒトツメ」  
「ガイコツヘイシ」
(結局スケルトン出しちった)
「マジュツシ」
「ヨロイヘビ」
「キバコウモリ」
「アカグモ」
「フタゴユウレイ」
「ネブネブ」
(いわゆるスライム系。別の友人から「スライムは欲しい」とアドバイスあり追加。)
「ヨロイヘイシ」
「トウメイヘイシ」
「バケキノコ」
「キュウケツソウ」
「タマゴン」
「ヒットデー」
「アカゾンビ」
「アルビノゾンビ」
「ナメナメ」
「ジグザグ」
「ネドラ」
「シロヘビ」
(実は物語のカギを握る)
「オークスパイダ」
「シザース」
「ファングス」
「アオマルメ」
(デザインが追いつかなくなり友人に依頼)
「フィンク」
「ザード」
「ドラップ」
「ガブリエル」
(夢に出てきたモンスターをそのまま採用した。このころノイローゼ気味だったわけね)
「ボルナク」
「キングブルー」
(とにかく切ってくる)
「レインボウ」
「ロムル」
「ドクーク」
「ガンセキオトコ」


これらのモンスター名前は、主人公となる女の子が自分のセンスで勝手に名付けていったという設定にしているんです。後半、固有名詞が多くなるが、これはストーリーのからみがあったせい。

てな感じで、特にゲーム進行に関わりのない裏設定も細かくつけくわえていきました。
よろいや武器にいたるまで、なぜ安いのか(高いのか)などルーツなども設定できているんです。





毎日こんなだから、下校時はわきめもふらずに、帰宅。
そして、寝るギリギリまでずっと、FM-7の前。

この時初めて、「メシなんかあとだー」という気分を味わいましたわ。
何かに熱中すると、ほんとにくうねるあそぶが邪魔になる・・・・・・・



締め切り日が毎月5日(だったと思う・・・)で当日消印有効、毎月やっているとはいえやはり自分が創っている立場上、他のゲームが掲載されるのはおもしろくないし、もし僕と似たコンセプトのゲームが先に投稿されたら、僕は二番煎じになる。このあせりが、一番プレッシャーだった。

もちろん、前作「ENEMIES」の失敗を二度と繰り返さないよう、バックアップは二度行いました。(バックアップ専用テープを2本使用した)



そして、5日。最終日。
前の日は徹夜になりましたた。
完成したのは、締め切り日の朝方でした。




それも、前日になって致命的なバグが発覚し、対応がタイヘンだったということから、精神的に疲労はピークをとうの昔にすぎていて、もう、あとは、寝たい・・・・・


・・・という欲求を押し殺し、マニュアルの作成。
マニュアルは、400字原稿用紙にてかるく30枚をこえた記憶があります。
(編集者からの立場では原稿用紙の方が字数が400字と固定されているため編集しやすいのだそうだよ。)



午前中のうちに郵便局へ行き、手続きをすませ、帰宅後、何も覚えていないぐらい、寝た。

月曜の朝は寝過ぎて、カゼをひいたことにして学校を休んじゃった。




さあ、やるべきことはやったぞ。


あとは、返答をまつのみ!



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第1話 みんなドラゴン!
第2話 テーマは「SF」
第3話 復元不可能
第4話 ライバル出現

第6話 そして1ヶ月後
第7話 掲載、テープログイン発売、賞金、印税
第8話 その後、そして今

資料集


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